「Heroes Charge」と「刀塔传奇(soul clash)」が日本で売れなかった訳、というか仮説
前に書いたけれど、中国のゲームに注目
日本では「soul clash」でリリースされている「刀塔传奇」と、そのパクリとされている「Heroes Charge」。前者は中国で爆発的なヒット、後者は北米で人気。
これだけ世界的に人気なタイトルが日本に上陸したらどうなるのか、ゲーム業界人であれば、誰もが気になるところ。
ところが日本では売れなかった
Heroes Chargeはずっと遊んでいて、APP ANNIEで順位も追っていた。ここのところ離脱していたので、そういやどうなったんでしたっけ、と調べてみた。
- Heroes Charge
- i OS / 全体196位(6月14日現在、2014年8月7日リリース)
- A OS / 全体174位(6月15日現在、2014年8月29日リリース)
- Soul Clash
- i OS / 全体340位(6月14日現在、2015年3月20日リリース)
- A OS / ランク外(6月15日現在、2015年6月15日リリース)
なんてこったい。
お世辞にも売れてるとはいえない数字。両作品とも、一時期はわりとプロモしていた(TV CMも!)ので、期待値に達している順位とは、とてもいえないだろう。
なぜなのかを考えてみた。
ローカライズとカルチャライズがダメだったんじゃないか説
グローバルビルドなので、日本向けにクライアントを作り直す、というのは、現実的に厳しいだろう。しかし、できることはある。それがプロモーション。
ところが、これがダメだった。
Heroes ChargeのCMリンクを張っておくけれど、どこの国の人かわからない人たちが、どこの国のジョークなのかわからないノリで繰り広げられるCM。見ればわかるよう、現地フィーリングでプロモ展開されていた。
異国情緒たっぷりなプロモが日本の人には受け入れられなかったのではないか。事実、APP ANNIEを見てみると、新規ユーザーの伸びで苦戦している様子が見える。
「Soul Clash」に関しては、完全に「Heroes Charge」に見込み客を奪われた形になっている。本家とか偽物とか、ユーザーには関係ない。LoLももたもたしてると、ほかのMOBAに客を取られちゃうかもね、日本では。
じつは離脱を招くゲームデザインだった説
「Soul Clash」と「Heroes Charge」はゲームデザイン、さらにいうならレベルデザインが特徴的(日本のソシャゲと比較すると特徴的、という意味ね)。これがダメだったのではないかという仮説。
両作品とも、ユニットの最大レベル=プレーヤーのレベル、になっている。プレーヤーレベルでバランスを取っている設計。日本のソシャゲだと、プレーヤーレベル=デッキコスト、フレンドの数、というケースが多い。
これ、どういうことかというと、強いユニットを作るには、プレーヤー経験値をあげることが必須ということ。大金を突っ込んでガチャから良いユニットを獲得しても、プレーヤーレベルを上げないと育成できないのだ。
強化素材をがんがん突っ込んで、すぐに「俺最強」ができない仕様。両作品とも、ユニットの最大レベルが90だったと思うのだけど、ユニットをレベル90にするには、プレーヤーレベルも90にしないといけない。
俺つえー防止の良い仕組みともいえる。課金厨が最強にならない。ある程度やり込まないと強くなれない、結構よくできた仕組み。事実、自分はこの仕組みはすばらしいと思っていた。だが、これが、じつは問題だったのかもしれない。
あなたが「Soul Clash」か「Heroes Charge」どちらかを遊ぶことにしたとする。少しプレイしてみて、コアプレイに楽しさを感じた、面白い。続けてみるか、と思った。育成周りもだいたい理解できている、としよう。
すると、あなたは、最初に育てるユニットをどれにするか、吟味すると思う。このゲームを続けてみるか、と思ったら、育成に必要な時間と労力の無駄を省くため、育成するユニットは徹底的に吟味するはず。これが当然の心理。
そして、厳選したユニットをデッキにセットして、毎日コツコツとデイリーミッションをこなし育成していく、そして、半年後くらい。それなりに時間をかけて、あなたのプレーヤーレベルは90となり、デッキのユニットも90になる。
そこで満足するでしょう。
なぜかというと、自分がそうだったから。レアなユニットを手に入れて、★を5にして、装備強化も終えて、レベルを90にまであげて、いちおうの最強パーティーが完成すると、もうお腹いっぱい。一回アリーナで戦って、結果見て、終了。
レベル90にするまでの苦労を知っているからか、対人戦や対ギルド戦のために、複数のユニットを90まで育成して、複数のパーティーを育てる気には、とてもなれなかった。育成に必要なアイテムも多いし。集めるのめんどいし。
というのが、プレーヤーレベル90になったユーザーが、意外と離脱しているのではないか、という仮説。
課金システムがだめだったんじゃないのかという説
最後の仮説。集金システムに問題があったのではないか、という説。
「Soul Clash」と「Heroes Charge」は、VIP課金という、中国では一般的な仕組みを採用している。課金額に応じて特典が付与される、というもの。具体的には、月額のVIP課金をすると、毎日魔法石がもらえる、というものだった。
わかりやすく円で説明しちゃうけど。
ガチャが一回1000円だったとしよう。しかし、月額のVIP課金をすると、1ヶ月間毎日100円もらうことができる。30日間、つまり合計で3000円もらうことができる。このお得なコースを300円で売る。誰がどう考えてもお得なVIP課金コース。
しかし、これが問題だったのではないか。
中国は、ご存じのように人口が多い。人口が多ければ、たくさんの人から少額を集めるビジネスモデルでも成立する。これはLoLも同じで、課金は弱い、一人あたりの課金額は低い、しかし、人が多いから成立する、というパターン。
100万人いれば1円ずつ集めても100万円になる。
しかし、人口が少ない場合、これは成立しない。日本は人口が少ない。なので、一人あたりの課金額を高くしないと、サービスが成立しなくなってしまう。なおかつ、この月額のVIP課金はお得なあまり、ガチャを回す意欲がそがれる。
10万人から1円ずつ集めたら10万円にしかならない。
10万人しかいないのであれば10円ずつ集めなければならなかった。
中国と同じ感覚で課金設定してしまったことが失敗の要因、という仮説。
最後に
パクリだなんだので炎上している「Soul Clash」と「Heroes Charge」だけど、自分は結構好き。
日本で量産されてるソシャゲの場合、強化素材にするため、大量のゴミユニットが必要になるけれど、両作品とも、最後まで育てればそれなりに戦える設計になっている。つまり、ゲーム中に明らかなゴミユニットが存在しない。
ソシャゲとはいえ、ゲーム中のキャラに愛は必要だし、それなら作り手はゴミユニットは作っちゃいけないはず。そもそもガチャで強くなるって仕組みが、そろそろみんな嫌気がしてると思うんだ。
昔は中国と言えばパクリゲームの国というイメージだったけれど、最近は見習うべき点が多く、また新しいゲームが中国からでてくるのが楽しみだったりする。