ゲームのブログ

都内で働く、とあるゲームプロデューサーのブログ

なぜ日本では高額賞金がかけられたゲーム大会が開催されないのか調べてみた

これがバズるということなのか。

 

すごくアクセスが伸びていてびっくり。変な汗が出た。イースポーツスクエアさんがツイッターでシェアしてくれたみたい。ありがたいことです。

 

twitter.com

 

イースポーツに関係してそうな話。


なぜ日本では高額賞金がかけられたゲーム大会が開催されないのか


高額賞金がかけられれば、そりゃ大会は盛り上がる。

 

www.negitaku.org

 

世界的にゲーム大会で一番ホットな印象があるのは、こちら「The International 4」。約10億円が賞金となっているDOTA2の世界大会。

 

この仕組みがおもしろくて、ユーザーがゲーム内アイテムをリアルマネーで購入すると、その売上の一部が賞金に上乗せされる。

 

さらに累積金額が一定の金額を超すと、賞金を開発会社であるValveが上乗せする、というもの。この積み重ねで10億円に達した。


「The International 4」は日本で開催できるのか?

 

法律の専門家ではないので明言は避けるのだけど、ちょっと難しいのではないかなと思う。ダメなんじゃないかと。

 

参加費を集め、それを賞金にして、勝敗結果で再分配、という、わかりやすい博打の形態ではないものの、ユーザーから集めたお金を賞金として再分配する、というのは限りなくブラックに近いグレーにも思える。

 

賭博罪に該当するのではないか。仮に法律的にオッケーだったとしても、当局から目をつけられそうなのと、何より世間様からお叱りを受けそうな印象がある。

 

高額賞金をかけたゲーム大会は完全に開催不可能なのか?


これが必ずしもそういうわけではない。実際に、オンライン麻雀で1000万円を賞金にした大会の開催実績もある。

 

www.maru-jan.com

 

この大会のサイトに法律的な事柄に関して、関係省庁とのQ&Aが寄せられている。

 

www.maru-jan.com

 

さらに弁護士の見解によると。

 

www.bengo4.com

 

「高額賞金が出る麻雀大会では、次のような工夫をしています。

 

(1)大会参加者から参加費等のお金をとらず、スポンサー等が賞金の原資を出すことによって、参加者が『財物の得喪を争う』という形はとらない。このため、賭博罪が成立しない。

 

(2)大会を反復継続的には行わず、麻雀店など風営法が適用される業者ではない者を主催者とすることによって、風営法の規制をクリアしている。

 

(3)客を誘いこむ手段として、取引に付随して景品を提供する場合は、景品表示法で、景品の限度額が設定されているが、大会の参加資格や申込方法をオープンにすることなどによって、限度額規制をクリアする

 

大会参加者から金銭を受け取らず、スポンサーが賞金を出す形をとれば大会は問題なく開催できそうだ。

 

将棋の竜王戦やゴルフの大会

 

将棋の竜王戦、ゴルフの大会なども、結構な高額賞金がかけられている。

 

将棋の竜王戦、第24期の優勝賞金は4200万円、敗者賞金は1550万円。スポンサーは読売新聞。読売新聞がスポンサードする代わりに、竜王戦棋譜を新聞に掲載することができる。「主催 読売新聞」という広告効果もあるのでしょう。

 

ゴルフの大会、ネットで何となく検索したら「東建ホームメイトカップ(第23回)」がヒットした。賞金の総額は1億3000万円円、優勝賞金は2600万円円。おそらくスポンサーの資金、観客の入場料、テレビの放映権でまかなわれているのでしょう。

 

でもって、この2つにいえることは、どちらも国民的な競技であるということ。

 

竜王戦、ゴルフの大会は、いずれも少なくない固定客を抱えていて、ある程度まで明確な広告効果が期待できる。お金を投資しても、回収の筋道が立てやすい、ということなのだろう。事業計画が作りやすいというわけ。

 

将棋やゴルフをMOBAやFPSに置き換えてみた

 

自分がスポンサー企業だったとして高額賞金を出したMOBAやFPS、あるいは格ゲーの大会を開催して、そこから広告効果が得られるか、投資した金額に見合ったリターンが得られるかと考えると、これはやはり厳しい。

 

竜王戦とウル4の大会を比較、それは羽生善治と梅原大悟を比較するようなもの。一般論的に、誰がどう考えても、羽生善治に圧倒的な安心感がある。スポンサー企業としては、やっぱ竜王戦のスポンサードにしときますわ、となってしまう。

 

つまり、日本で高額賞金をかけたゲーム大会が開催されないのは、法律的な縛りが原因なのではなく、どちらかというとビジネスモデルとして成立しないからである、という、すごく凡庸なまとめに落ち着くわけだ。乱暴なまとめ方だけど。

 

日本のイースポーツはどうなるのか

 

もっと盛り上がって欲しいな、と思う。そのためにも、体力のあるゲーム会社は、いろいろなイースポーツ系の大会をしたりして、認知度をあげていいくといいなーと思う。でも、まだまだ一般に浸透するまでは時間がかかりそう。

 

そもそも、なぜMOBAやFPSが日本でいまいち流行らないのか。根本的に、見た目からして面白くなさそうに、日本人には見えているのだと思う。MOBAやFPSスクリーンショットを見て、そもそも面白いと思えないのだと思う。

 

キャラデザが欧米風とかって話しじゃなくて、LoLの画面を見て「うわー楽しそうなゲームだ!やろう!」と思える人は、ほとんどいないと思うし、FPSも同じで、CSの画面を見て「テンションあがる!すぐやりたい!」という人は、いないと思う。

 

なにこれ、つまらなさそう、なにがおもしろいのか理解できない、というのが、日本人的な反応なのではなかろうか。なので、海外で流行ってるゲームを日本に持ってきて「イースポーツ!」と布教しても、たぶん、限界がある。

 

じゃあ、どうすりゃいいのかというと、MOBAでもFPSでも、日本初のゲームが出てこればいいのだと思う。日本の開発会社が、日本の文法で作ったMOBAやFPS、それが爆発的にヒットしたら、日本でもイースポーツは流行る可能性はありそう。

 

体力のある大手のゲーム会社さんは、日本初の競技性の高い、イースポーツ的なゲームを開発して、かつての格闘ゲームブームみたいな、日本中を巻き込んだムーブメントを起こしてくれるないかな、と、すごく期待しているのでした。