プロゲーマーの歴史について調べてみた③~韓国産FPS、プロモーションとしてのプロゲーマー
プロゲーマーの歴史について調べてみた②~日本初のプロゲーマーの誕生と挫折 - ゲームのブログ
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韓国産FPSの日本上陸
日本初のプロゲーマーの話題が下火になろうとしている頃、PCオンラインゲーム界隈では韓国産のFPSが人気を集めていた。当時、それなりに人がいて(当時)目立ったところを羅列すると。
- 2006年11月30日 スペシャルフォース(NHN)サービス開始
- 2007年7月26日 サドンアタック(ゲームヤロウ)サービス開始
- 2008年2月23日 クロスファイア(アラリオ)サービス開始
- 2008年12月1日 Alliance of Valiant Arms(ゲームオン)サービス開始
いずれもF2Pのアイテム課金のゲームで、CSのようにガチなゲームではない(課金で武器や装備の能力が変化するため、格闘ゲームと異なり対戦条件が平等ではない。もちろん運営側は平等になるよう努力している)。
当時、もっとも人気があったのはサドンアタックと記憶しているが、このサドンアタックの公認インストラクターに就任し、ゲームコミュニティを盛り上げたのがKeNNYだった。KeNNYとは、4dN.PSYMINでリーダーを務めていた人物だった。
これがPCオンラインゲームのFPS界隈におけるプロゲーマーの潮流となる。
プロモーションとしてのプロゲーマー
F2Pのアイテム課金、とはいえ、プレーヤースキルが求められるゲーム性は、格闘ゲームにも似ている。ゲームがうまいやつがかっこいい。ゲームがうまいやつがヒーローであり、ヒーローがいればゲームコミュニティは盛り上がる。
いまだ触れていないが、ストリートファイターの大会であれば、梅原がいなければ盛り上がらない。これと同じで、サドンアタックの大会であれば、KeNNYがいなければ盛り上がらない。KeNNYがいなければ、自分たちで作り出せばいい。
運営会社にはプロモーションとしてプロゲーマーが必要だったのである。
スポンサード契約のスキーム
韓国はPCオンラインゲームの大国である。紹介したFPSでは、開発会社が主催する世界大会が、韓国では頻繁に行われており、そこには多額の賞金がかけられている。
世界大会に参加するには、日本国内の予選を通過する必要がある。日本国内の予選を通過したクランが、韓国での世界大会に挑戦する、そのための渡航費やデバイスなどを、スポンサー企業が支援するわけだ。こうしてプロゲーマーが誕生する。
日本代表クランは、ゲームコミュニティではヒーローだ。ヒーローにスポンサー企業のデバイスを使用して闘ってもらえば、それだけで抜群の宣伝効果が期待できる。渡航費くらい安いものだ。
ゲーム媒体にマウスの広告を出したとして、そこから買ってくれる人の数など微々たるもの。そもそも誰が広告を見ているのかすらわからない。スポンサード契約をすれば、確実にFPSプレーヤーのコミュニティに訴求できる。
ゲームを運営する会社から見れば、やはり世界大会は盛り上がる。プロゲーマー契約というイベントも盛り上がる。
選手たちの活躍を見て、既存プレーヤーはモチベーションが上がり、ゲームが活性化する。さらに話題となっているゲームには競合タイトルからプレーヤーが流入してくるため、ゲームビジネスとしてもスケールしていく。
プロゲーマーとして闘う選手は、世界大会への渡航費を負担してもらえ、デバイスまで提供してもらえる。デメリットが見つからない。
三者三様でいいこと尽くめのスキームなのだ。
とはいえ、それがプロなのか
彼らは本当の「プロゲーマー」なのか?
答えは「NO」だろう。韓国産FPSのプロゲーマーは、ゲームビジネスという文脈での、プロモーションとしての「プロゲーマー」でしかない。
その証左として、梅原大吾やときどといった格闘ゲームのプロゲーマーが自著を出版するなど、一般メディアに活躍の場を移しているのと比較して、韓国産FPSのプロゲーマーはゲーム媒体以外で語られる機会が、ほぼ、ない。
その理由を考えると。
- そもそもPCオンラインゲーム、FPSがマイナー(メディアで取り上げるほどの話題性がない。誰も知らないから一般メディアで取り上げる必要性がない)
- ゲームがF2Pのアイテム課金モデルであるため(大会でレギュレーションをそろえたとしても、課金で強さが変わる、ガチャの引きの強さで強さが変わる、という事実は消すことができないため、BADイメージがつきまとう。そのため、一般メディアでは取り上げることを敬遠しがちになる)
- 開発会社主催の世界大会のため自作自演っぽくなる(米国で有名な格闘ゲームの大会EVOなどのように、第三者が主催した大会ではなく、韓国産FPSの大会は開発会社がイベントとして実施しているため。自作自演、ゲームビジネスとしての印象だけが際立つため、一般メディアでは取り上げにくい)
SIGUMAや4dNが活動を続けており、CSというアイテム課金ではないゲームで、開発会社以外が主催する世界大会で闘い続けていて、日本でもFPSが格闘ゲームと同じくらいの認知度を獲得していたら、彼らは梅原になれたのかもしれない。
その④に続く。